白谷小屋では思ったとおり、たくさんのグループが休憩していた。
トイレ休憩だけちゃっちゃと済ませ、"もののけ姫の森"をめざす。
その前に次は七本杉があった。
宮崎駿監督が何度も通って観察し、映画の中にも登場しているモデルとなった原生林を通称"もののけ姫の森"と呼んでいる。
ガイドブックにはそういう内容の看板が立っている写真が掲載されていたけど、実際にはなかった。
そのガイドブックの写真を見ていなかったら、分からずに通り過ぎたかもしれない。
そのあたりは行きも帰りも人がたむろしていて、写真を撮るのもやっとだった。
あの映画は確か北関東から上の場所を舞台としていたと思うのだけど、こんな南の屋久島の森が出てくるっていうのはちょっと不思議だなとなんとなく思った。
このあたりから徐々に登山道自体が小川のように水が流れている状態がしばらく続く。
水のせいで登山道は滑りやすくなっていた。
原生林のあたりまで来るとやっと写真やテレビで見知った屋久島の風景に近づいたものの、思い描いていたような神聖な感じというのは思ったほどには感じなかった。
なんとなく少し残念だが、全日程晴天に恵まれていたことを考えるとそれはそれですごいと思う。
登山客には観光客だけでなく、研修中の学生の集団もいた。
5,6人程度のグループごとに引率の先生が1人ついていたので、おそらくそうだろう。
生徒たちは一様に軽装で中にはバスケットシューズの子もいた。
息も切れずに上ったり降りたりしている彼らに何度も道を譲ったり譲られたりしながら登るのだが、その動きの切れといったら・・・若いってすごいな。
原生林コースの折り返し地点は当の昔に過ぎ、すでに太鼓岩往復コースに入っている。
太鼓岩目前の辻峠ではたくさんの人が休憩していた。
また、休憩できるようにベンチもいくつか設置されていた。
ここまでで私はかなり疲れていた。
白谷小屋からあとの原生林では結構な勾配の登山道が緩やかに続いるうえに人の往来が多くて、なかなかペースがつかめなくなってしまったようだ。
最後の太鼓岩まではちょっと無理かもしれない・・・と少しばかりへこんでいたのだが、私とは違ってまだまだ元気な友人はベンチで休憩している人たちと情報交換をしている。
私は黙ってその会話に耳を傾け、ひたすら呼吸が戻るのを待っていた。
結局、"ここまで来たんだから太鼓岩まで行かないと絶対に後悔するよ"というどこかの高校の先生の力強い一言で私も心を決めた。
さて、いよいよ正念場の往復30分が始まる。
例によって私が先行となるわけだが、実はここで私は進路を大きく間違えそうになってしまう。
のぼりとくだりが目の前に現れたので、看板をよく読んで私は下りに行くのが正しいとなぜか思ってしまった。
しかも、その先に野生のヤクシカが歩いていた。
またまた興奮した私は、ふらふらとヤクシカのほうへ寄ってしまう。
後ろで友人が呼び止めるのだが、とにかくヤクシカをカメラに収めたい上に近寄りたいので耳に入ってこない。
しばし、人間のことをまるっきり気にせず行動するヤクシカを眺めてしまった。
姿
が見えなくなるまで見ていたかったのだけど、そういうわけにも行かず^^;
やっとこさ分岐点まで戻った私は今行こうとしたくだりからやってきた人に尋ねてみた。
"太鼓岩は行かれましたか?"
"行きましたよ"と若いお兄さんが答えてくれたので、"やっぱりこっちだね"と歩き出したのだけど、お兄さんは振り返って"太鼓岩はそっちじゃないですよ"と冷静に教えてくれた。
あれ~やっぱり違ってたのか~^^;
どうやら疲れもピークらしい、どうものぼりに足が向かぬ・・・。
とにかく残りは急勾配で、どうにもこうにも辛い。
しかし、下山してくる人たちが口々に"がんばれ、もう少しですよ!"と励ましてくださるので、そのたび胸が熱くなり"よし、がんばろう"と気持ちが盛り返してくるのだ。
それを何度か繰り返し、ようやく日の光が見えてきた!
日の光をいっぱいに浴びて、太鼓岩の天辺に登ったときの気分ときたら!!
声も出せずに絶景に見入っていたら、駆け上ってきた若者が叫んだ。
"これで来年の就活は絶対うまくいくっ!"
ガッツポーズで叫んでいた。
見ると岩の上には友人と私以外は白いジャージの若者が4,5人。
みんな口々に達成したよろこびを叫んでいる^^
彼らは静岡から研修で船でやってきた水産学校の学生だった。
入港する時に大きな船を見ていた私は、俄然元気になって会話に加わろうとしたのだけど・・・若者たちに怪しがられてしまった。
それからカメラを交換してそれぞれの記念写真を撮り合って、若者たちは我先に走って(!)下山していった。
しばらく景色を楽しんでから友人と私も下山する。
しかし、下山のほうが厳しいため、私はどうもスピードが出ない。
さすがに友人に道を譲り、ゆっくりと降りていくことにした。
とにかく私はおっかなびっくり歩くので、友人には本当に申し訳なかったと思う。
もののけ姫の森の辺りで、立派な角を持つヤクシカに遭遇、よく見るとその前方には母シカと子ジカまでいた!
すごい!とうとう親子まで見てしまった!
ヤクシカは奈良や宮島のシカより1回りくらい小さい。
慎ましやかで優しげな感じなんだけど、うかつに近寄れない雰囲気を持っていた。(残念ながらカメラには収まらなかった・・・)
太鼓岩まで登ったという達成感の後は、屋久島灯台で夕日を見たいと友人がつぶやいたので、超特急で下山した。
行きで長くて険しい登山道を通ったので、帰りはその半分くらいの距離を飛ぶように下ってゆく。
途中、友人が子供のころから大好きだという「エルマーの冒険」という絵本の話をしてくれた。
歩いていて、その中に出てくる島を思い出したらしい。
友人はとにかく話がうまくて、聞いているのがとても楽しい。
そのお話もとても楽しくて夢があって、私は読んだことのない絵本だったので、どんな絵柄かはわからないけれど、エルマーが行く先々で知恵を使って難問を解いていく話はとてもわくわくした。
山道をすいすい降りながらだったので、まるで物語の中にいるような気分になってたんだよなあ。
おかげで疲れなんて微塵も感じないであっという間に登山口までたどり着いた。
ありがとう!
さて、それからは友人がハンドルを握り、夕日を目指してひたすらに車を走らせる。
看板が目に付かず、危うくヤクザルの群れに取り囲まれそうになった。
しかし、それが逆に功を奏し、行きには見えなかった看板を見つけることができた。
無事に日暮れ前に灯台に到着したはいいが、今度は早すぎたようで、しばらく太陽を見つめていたが沈みそうにないので移動することにした。
夕日のポイントを探しながらの移動していたら、ホテルのおじさんが夕日ツアーに来ているところに遭遇した。
おかげで、とてもきれいな夕日を拝むことができた。
こんなにゆっくりと沈む夕日を見たのはずいぶんと久しぶりだ。
今日は一日、無心に上って歩いて、体は疲れているはずなのに、なんだかとても穏やかで静かな気持ちで夕日を眺めていた。
それから今度は、夕食の心配。
今夜こそは飲んだくれることがないようにしなくては。
結局、ホテルのすぐ横に立ったばかりだという居酒屋で今夜はまったりすることになった。
その前にコンビニによって水の確保をしたり、気になっていたパン屋でパンを買ったり・・・いろいろと段どりを済ませて・・・。
その後、料理を前に心行くまで友人と語り合い、とても満足な夜だった。
最終日へ続く・・・
^^;
「太陽の匂い」
WORDS & MUSIC & PLAY BY 鈴木雄大USB





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