今回の大阪訪問は、当然ながら、武田真治君の千秋楽を目に焼き付けるため。
これが見納め、忘れないようにしっかり武田トートの歌を私の中に記憶してきた。
そして、今回は、俳優武田真治への期待。
今まで、お気に入りのミュージシャンのライブツアーでだってここまで同一ツアーでライブに行ったことはない。
それが今回、『エリザベート』に5回も足を運んで自分でもびっくりしている。
音楽の場合は、レコーディング音源があるから、ある程度それを聴きながらライブを思い起こすことが可能なので、あまり切羽詰ることがない。
もちろん、会場ごとにライブパフォーマンスは変わるものだから、たくさんいけるほうがいいに越したことはないけど。
実際問題としては少し難しい。
ところが、『エリザベート』に関しては、DVDはおろか、CDの発売さえも今のところ予定がないという。
だったら、忘れないように武田トートの姿を目に焼きつけ、その歌を記憶しなくちゃという切羽詰った思いがあった。
そのくらい、去年9月最前列で目撃した武田真治演じるトートはものすごい衝撃だった。
ステージを駆け抜ける武田真治君は、私の持っているイメージとはまるで違う姿をしていた。
もちろん、トートの衣装を身に着け化粧をしているので違うのは当たり前なんだけど。
そういう意味ではなく、私は初めて、武田真治という役者が楽しそうに役を演じているのを見た気がしていた。
目がきらきら輝いていて、生き生きとしている。
今まで、画面やスクリーンで見てきた武田真治と違う。
解き放たれた・・・という表現がぴったりだと思った。
おまけに、すごい声で歌う!
元々、彼のしゃべる声は好きだったのだけど、あんなふうに色気のある歌を歌えるなんて。
最初に聴いた『最後のダンス』を私は死ぬまで忘れられないと思う。
もちろん、千秋楽の『最後のダンス』のほうが、技術的にも声の点でもいいはずだ。
だけど、あの日なんの心の準備もしていなかった私の胸を突き抜けたあの歌が一番記憶に残ってしまった。
そして、我慢できずに2回目に行ったときは、喉がかなり痛んでいて、声を出しずらそうな上に音程のコントロールもままならない感じだった。
だけど彼はそれを絶対に顔に出したりはしなかった。
かなり苦しくて、声を出すのもつらかったかもしれないけれど、ステージの上では常にトートだった。
印象は見るたびに変わる。
もちろん、ひと区切り終わるたびに演出が変わっていくようだから当たり前。
そのうち、私のほうがこの演目の物語を理解してくる。
そうすると、トートの表情からいろいろなことを想像できるようになって物語自体の解釈もかなり変わっていった。
武田君のインタビューや小池修一郎さんのインタビューから自分なりの解釈をして、また目の前で繰り広げられる物語の印象が変わる。
最後までその繰り返しだった。
最後までその存在理由に疑問を持っていた『愛と死の輪舞』
きっと何度聴いても心動かされることはないと思っていたのに。
12月に不完全な形のこの歌を聴いていたせいもあると思うけれど、前回大阪で完全に胸を打ちぬかれた。
その後しばらくは、その歌声が耳を離れず夜眠れなかったんだよね、実は。
私がもうちょっとかなと思っていると、次の時にはその部分を武田君は乗り越えていった。
そのたび驚かされ、その姿勢に何度も頭が下がる思いだ。
こういう人をプロと呼ばなくて誰がプロなんだ!!
本当に最後の今夜、始まった瞬間から武田真治はちょっと違っていた。
声の張りも、踊りやしぐさも、すべてが最高潮で、非の打ち所がなかった。
その表情からは自信がみなぎっていて、ハプスブルグ家の滅亡を手引きしているのは、やっぱりトートだと私は思った。
今夜のトートは、本当に"死"そのもので、どのシーンも壮絶な色香を放っているにもかかわらず、登場するたびに冷たい死の予感を残していた。
そして、今夜聴いた『闇が広がる』
思い出すと涙が落っこちそうだ。
父のようにルドルフを激励しながらも、巧みに死へと向かうようにルドルフの気持ちを修正してゆく。
自分の思うようにルドルフの気持ちが向くと酷薄な笑みを浮かべ、でも、ルドルフがまた気持ちを変えると舌打ちして、思案し、またほくそえんで彼を死へと巧みに誘う。
今夜聴いた『闇が広がる』は一番怖くて、きっと忘れられない。
ルドルフがフランツに最後通牒をされた瞬間のトートの表情に私は鳥肌が立った。
一番最後、エリザベートとデュエットするけれど、その第一声で私は"あ、これはやばいかもっ!"と正直思った。
歌う前から感極まっているのが分かったので、ワンフレーズ歌って、思わず詰まっちゃったとき心のなかで"やりとげろ!!武田真治!!"と思わずエールを送った。
でも彼は、やっぱりプロだったね。
その後、そんな感じを微塵も見せずに歌いきったんだ。
エリザベートを棺に戻し、客席に向かってすくッと立っているトートの顔は少し穏やかで、自分自身と戦い続けたエリザベートの最も切望する姿でい続けたトートにも安息のときがやってきたんだなあとなんだか唐突に思った。
最後の挨拶、緊張しまくった上にパニクってしゃべりたかったことを忘れてしまった武田君。
本当に緊張してたんだなあと思った。
なんども泣けてきて詰まるんで、私は思わず何度も"がんばれ~"ってつぶやいちゃったんだよ・・・届くはずないのになあ。
この長い公演をやり遂げたことに彼は感無量で、そういう気持ちが私にも伝わってきて・・・涙が落っこちちゃったよ。
本当に良くやった。
すごい俳優だよ!武田真治は!!
武田君には、これからもずっと舞台に立って欲しい。
もちろん、私は、ミュージシャンである武田真治を一番愛しているので、サックスを吹く姿を見られたら一番うれしい。
だけど、舞台の上で、目をキラキラさせて走り回る武田真治もこれからはたくさん見たい。
ミュージカルでもいいし、演劇でもいい。
舞台の上で常に一発勝負をする姿を私は見たいなあ・・・本当にそう思う。
本当にお疲れ様、でも、これからの武田真治に大いに期待もするよ!!
「闇が広がる」
WORDS & MUSIC BY MICHAEL KUNZE AND SYLVERSTER LEVAY、Japanese Words BY 小池修一郎、 PLAY BY 武田真治




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