小雨まじりの大阪へ懲りもせず『エリザベート』を見に行ってきた。
なんてったって、とうとう千秋楽ですから。
普通なら、2回分のそれぞれの感想を書くところだけど、今回は、そういう枠を取り払ってとりあえず2回感想を書こうと思う、
まずは、『エリザベート』という作品について。
気に入った映画を何度も見ることが良くあった。
今は半年もせずにDVD化されることが多いので、それほどたくさん見に行くことはなくなったけれど。
でも、映画を何度も見ることと、毎回ライブで繰り広げられるミュージカルを見るのとでは、気持ちがぜんぜん違うんだと今回の体験で思い知った。
私は舞台演劇の観劇回数は極端に少ない。
しかも、同じ演目を2回見るという体験をしたことがなかった。
『エリザベート』は、見るたびに違う印象を受け、物語について毎回新しい発見があった。
今回最後だったけど、やっぱりまた新しい発見があった。
結局私には、最後までトートを擬人化できなかったので、彼が人間の男のようにエリザベートを愛していたとは解釈できなかった。
トートはあくまでも"死"そのもので、それを望む人間の前に現れるとき、彼らが最も望む存在として現れるもの。
エリザベートは、最後まで自分しか愛せなかった。
ふたたび棺に戻る前、トートと歌いながら、結局トートのほうを見ることがなかったのがその証拠だと、千秋楽の時に思ったんだよね。
2人の間に私は最後まで、エリザベートとフランツが出会ったときのような恋愛感情を感じられなかった。
ルドルフの前に現れるトートのほうが、私には強烈だった。
トートはルドルフをいのままにするためにあらゆる手を使っているように見える。
母のように、父のように、そして、恋人のように。
特に、子供のルドルフの前にはじめて現れ、彼を抱き寄せるときのトートはとても女性的で美しいが、ルドルフが手から離れた一瞬後の表情に、私は毎回鳥肌が立ったものだ。
自分の意のままに出来る存在。
いつ、どこでそれを実行するのかは、トートの気分次第。
だけど、エリザベートに限っては、それがなかなか難しい。
彼女は死ぬことと同じくらい生きることに執着しているからだ。
今回、涼風エリザベートと武田トートの取り合わせを始めてみた。
私は朝海さんとやるときの武田トートとの違いはあまり感じなかった。
涼風さんはやっぱり歌がうまくて、感情表現がお上手。
だから、その分、武田トートの演技にも多少のエッセンスが加えられたように感じられるのかもしれない。
それは見ている人の解釈によってずいぶん変わるように思うんだよね。
私のように、エリザベートとトートの関係は、決して人間同士の恋愛のそれじゃないと思ってみている輩には、トートの態度に微塵も切なさとかは感じなかった。
いや、感じなかったわけじゃない。
トートは純粋に"死"だと私は思っているので、エリザベートの望む姿で彼女を誘うのにうまくいかない・・・そのうまくいかないという部分に対してトートは切なさを感じているかもしれないなと思う。
トートはエリザベートの心の裏を映しているから、彼女の生きたいという気持ちが強くなるとトートの力が少し小さくなり、その逆のときはトートの勢いが増す。
やっぱりこの演目は、ハプスブルグ家の滅亡の歴史を死というものに指揮を取らせて"再演している"物語なんだなあと今回見て改めて感じた。
フランツは、最初から最後までエリザベートに夢中で、彼女に自分の思いを理解して欲しいと思うだけだった。
エリザベートは、トートのいうとおりフランツのことを愛していなかった。
恋には落ちたけれど、結局彼はフランツの思いを理解する気には最後までならなかったし、彼女もまたなぜフランツは自分の思いを理解してくれないのだろうと思い続けていた。
トートが叫ぶ"エリザベートは俺を愛している"は、つまりはエリザベートは彼女自身しか愛していないという意味だと私は解釈することで折り合いをつけた。
ゾフィが言う。
"義務を忘れたものは滅びるのよ・・・"
フランツもエリザベートも国のことは一回も考えなかった。
少なくとも、この物語を見る限りでは、そんなシーンはなかったように思う。
ルドルフは、ハプスブルグ家をなんとか滅亡から救おうとしていた。
でも、その思いも、フランツとエリザベートの身勝手な思いによって断ち切られる。
滅び行く王国の宮殿の外には、飢えた民衆たちが立ち上がっている。
結局最後までエリザベートはそのことに向き合うことはなかった。
この物語は、他国の歴史を"死"に人格を与えることで、ドラマチックな物語に仕立て上げたものだけれど、今日冷静に見ていて、案外よその国のことでもないように感じた。
なんとなくね・・・。
WORDS & MUSIC BY MICHAEL KUNZE AND SYLVERSTER LEVAY、Japanese Words BY 小池修一郎、 PLAY BY 涼風真世




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