黒沢監督の作品は『アカルイミライ』がすごく好きで、時々思い出しては見ている。
一番最初に見た作品は『大いなる幻影 Barren Illusion』これは武田真治君が主演していると知ったので見た。
この映画のポスターで武田君が窓辺に座っている建物は今はなき同潤会アパート。
映画の中のこのアパートの印象がとても強くて、壊される前に見に行った。
正直、内容についてはあまり印象に残ってない作品だったので、『アカルイミライ』と同じ監督だとはすぐに気がつかなかった。
黒沢監督はホラー映画の人という印象があって、彼のホラーは怖いとよく聞く。
すでに見ている2本の映画にはそんな雰囲気はまるでないので、私にはピンと来なかった。
今回見た『回路』も怖いと聞いていたので真昼間に見たのだけど、いわゆるホラー映画的怖さは微塵も感じなかった。
映画の中で徐々に広がってゆく現象が、もしも本当に起こったら・・・そう考えるととても怖いと思ったけどね。
それは、多分ありえない話。
この映画を見て怖いと感じる人は、どういう印象で怖いと感じるのかな。
この映画では、インターネットを介して幽霊が現実世界にあふれ出してくる。
彼らはただ現れるのではなく、現実世界で生きている人間を幽霊にする。
インターネットとは関係ない生活を送っている人も影響を受けて次々と幽霊になってしまう。
別々の場所でその現象を目の当たりにする主人公2人(麻生久美子、加藤晴彦)は、それに巻き込まれまいと逃避行をするのだが・・・。
主人公の一人川島(加藤晴彦)は、図書館の中を徘徊する幽霊を目撃する。
その様子を見ていた大学院生(武田真治)から"あれは何か分かるか?"と問いかけられ、妙な話を聞く。
ある場所に入れられた幽霊は、その量を超えるとこの現実世界に出てくるしかなくなる。
そんな現象が起こるきっかけは些細なことで、誰か(哀川翔)が作った仕掛けが破られ、幽霊のいる場所と現実世界の"回路"が開かれたてしまうとあふれ出てくる・・・と言うのだ。
男は一度開かれたシステムはとめることが出来ないと言った。
この男は妙なコンピュータプログラムを作って後輩(小雪)に観察させている。
・・・なんとなく、私はこの男の作ったプログラムがそもそもの発端なんじゃないのかね?と思ったんだけど、再度この男が現れることはなく、説明は最後までされない。
この映画の中での幽霊の概念がとても面白い。
説明しにくいが、肉体を離れた精神が永遠に浮遊し続けることをさすようだ。
それは川島の友人(小雪)がしゃべることなんだけど、面白いのは川島は死にたくないと考えているらしく、永遠にいき続けることが出来るはず・・・などと言う。
それってつまりは2人の言ってることは同じなんじゃないの?
幽霊になってしまうと、ずっとひとりで過ごさなければならないようだ・・・永遠に。
幽霊を見た人はみんな、恐怖のあまり死んだほうがまし・・・と思うのか、死ぬことを選ぶのだけど、死んでしまうともう他の幽霊と触れ合うことが出来ず、孤独になる。
そして、また彼らも生きている人間に助けを求め・・・・その現象が映画の中では世界中に広がってゆく。
一人ぼっちで孤独だという人間は、幽霊の仲間になれば寂しくないと思うらしく、"回路"を開くための"開かずの間"(どうやらこれが件の仕掛けらしい)を作った後、自殺する。
その映像がまた次の孤独な人間の前に映し出され、"開かずの間"が何も知らない人間によって結界を破られ・・・。
世界中の人々が幽霊になっていく。
孤独から逃げるために孤独になってしまうなんて、考えただけで恐ろしい。
不思議なんだけどこの映画を見て『大いなる幻影 Barren Illusion』のことを思い出した。
こちらは、主人公(武田真治)がだんだん消えていく話だった。
ぼんやりしているとだんだん姿が薄くなっていく。
それは、幽霊になるんじゃなくまさに消えて行くのだ。
微妙にリンクしてるのかな。(もう一回見てみよう。)
映画を見るたび、黒沢監督がナニを表現したいのか、正直分からない。
分からないんだけど、面白いと感じるんだよな。
見ているうちにだんだんと自分の頭の中で想像力の翼が広がり、画面の中で起こっていることを見て思考が開かれるって感じ。
私が感じているものが、黒沢監督がもくろんでいる方向のものなのかはわからないけど、面白いと思う。
『アカルイミライ』などは、ほんっとーに意味不明な映画なんだけど、最後がすごく好きで。
そこはかとなく目の前がぱっと広がる感じがするんだな。
小難しい表現でいろいろ書くことは出来るけど。
案外、黒沢監督の言いたいことは単純なことなんじゃないかと『回路』を見ていて思った。
『回路』のラストには、悲しい幸せを感じた。
どうなるか分からないけれど、未来はあるはず・・・そんな風に思った。
「荒野へ還るものたちへ」
MUSIC & PLAY BY LOSALIOS




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