2週間ほど前、学生時代の友人たちに会うために広島へ遊びに行った。
広島駅前にある大きなデパートの中の本屋で、自分の家の近所では手に入らない本を物色したのだが、結局ほしい本は見つからなかった。
かわりに前々から読みたかったSF小説を見つけたので、帰りの鈍行列車(乗車時間1時間30分)で読もうと購入。
オールダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」という作品なのだが、これが久々に私の中にあるSF大好き魂を揺り起こすほどの傑作だった。
オールダス・ハクスリーという作家に興味を持ったのは、アメリカの(伝説の)ロックバンドThe Doorsのヴォーカルだったジム・モリスンの伝記を読んだことがきっかけだった。
ちなみにジム・モリスンに興味を持つきっかけになったのは、バル・キルマーが本人そっくりに演じた映画「ザ・ドアーズ」だった。(メグ・ライアンが恋人役だったなあ)
映画の中で流れるThe Doorsの音楽がとても不思議でかっこよく思え、しばらくThe Doorsばかり聴いていた時期があった。
映画の上映にあわせてジム・モリスン本人の映像(ほんとにバル・キルマーはそっくりだ!)や書籍もたくさん出回ったので、片っ端から本を読んだ。
その中でThe Doorsのデビュー曲「Break on Through (To the Other Side) 」の歌詞がオールダス・ハクスリーの「知覚の扉」という本に影響を受けているというようなことが書かれていたのだ。
「知覚の扉」は現時点で私には読みこなせてない。
薬物使用による知覚の探求というものがテーマなのだが、興味がわかなかったからか妙に難解に感じてしまった。
それで、オールダス・ハクスリーの事を調べていたら「すばらしい新世界」というSF小説があるということを知り、頭の隅にあったというわけだ。
このSF小説は架空世界を描いたSFでこれがとてつもなく醜悪で胸糞悪い話だったのだ。
それは私の想像の域を超えていた。
これほど醜悪な世界を描いたSF小説を私は今まで読んだことがない。
「MATRIX」なんてまだまだ序の口と思える。
スティーブン・キングの読み始め10ページで10人が殺されるホラー小説だってこれほどおぞましくはないと思えるほどだ。
久しぶりに怒りにかっかと頭を燃やしながら読んだ。
しかし、読み進めるのをやめられない。
なぜなら、内容はとても面白いからなのだ。
舞台はイギリスと思われる国なのだが、描かれる世界では人は容姿や知能、知性についても綿密に計算された階級別に工場で"生産"され、睡眠学習を主体にした条件付けを行うことによって自分の生まれた階級や世界に不満や不安、疑問を持つことさえないのだ。
心理的な不安を覚えたときはいわゆる精神安定剤を服用すればいい気分になってそれを忘れることが許されている。
また、幼児期からフリーセックスが奨励され、女性はあらかじめ妊娠しないように作られている。
特定の異性と付き合い続けることはおぞましいことでそれを望む人間はおかしい人といわれる。
家族という概念はなく、人間は母から生まれるという事実は過去の産物で古い考えとされ、そのことを口にすることは最大のタブーで神を冒涜することに値する。
長々とそんな世界のことが語られた後、実はこのように管理されていない場所もあることがわかる。
そして、その管理されていない場所から来た一人の青年が、この管理された胸糞悪い社会を目にしたとき・・・。
この本の中にある世界の常識はどこを読んでも、私が常識と思っているものと反対の内容を示していて、いちいち頭が混乱する。
人間という動物のいやな部分が露骨に表現されているようにも感じる。
しかし、描かれる管理された人間の言動・その姿が自分と重なるような気がする瞬間があったり、今の日本の状況に重なるような気がするという瞬間があったりする。
これが第2次世界大戦前に書かれた作品だというから驚きだ。
人工授精等の科学技術に関しては、現在実現されているし、心理描写にしても現在に通じるものが充分にある。
そして、それらの種明かしをすべて聞いた青年の取る道は・・・・。
いや、久々にかっかしながら読ませてもらった。
「およげ!たいやきくん」
WORDS BY 高田ひろお、MUSIC BY 佐瀬寿一、PLAY BY 子門真人




面白そうな本ですね。
探してみます。
全然違うんだけど、筒井康隆の「美藝公」って読んでませんか?
投稿情報: むねお | 2007-03-14 00:44
>むねおさん
面白い本でした。
思い起こして腹は立つし、悲しくなるし、いろいろと私の中に問題提起をしてくれた作品です。
筒井康隆さんの作品は、恥ずかしながら小学生のときに「時をかける少女」を読んだ記憶しかないんです。それで、「美藝公」を調べてみたんですけど、面白そうですね。
その前に「日本以外全部沈没」を読みたいなあと思ってますが。
最近、恩田陸さんの「ロミオとロミオは永遠に」というかなりいかれたSFを読んだんですが、かなりきてました。
投稿情報: 安井文@管理人 | 2007-05-10 09:47
昨日は御来訪どうも。
筒井の「時かけ」、知世ちゃんの遥か以前に読みましたとも。
夢分析に関わる同時収録作品もインパクトありました。あの頃のジュブナイル誌独特の挿絵も懐かしいです。
ブックレビュー書きたいのに書けない・・・
投稿情報: むねお | 2007-05-11 13:02