金曜日の朝、珍しく新聞のテレビ欄に目をやるとテレビ東京の『たけしの誰でもピカソ』に大江健三郎・光親子が出演という文字が目に飛び込んだ。
これはぜひ見なくては!
なんかちょっとわくわくした。
1日中夜10時の放送時間を首を長くして待っていた。
新ドラマの放送日も忘れがちな私だが、今回は忘れることなく直前には録画セットまでしておいた。
だって私は大江光さんの作る音楽がとても好きなのだ。
大江光さんは脳に障害を持って生まれた。
それでも家族との生活の中で彼は彼のスピードでいろいろなことを学んで人とコミュニケーションすることも日々習得している。
そんな彼は子供の頃から、音楽だけは楽しんでいたそうだ。
言葉を覚えるのが遅かった光さんは鳥の声が大好きだったので、ご夫婦は手に入れられる限りの鳥の声のレコードを集めて聞かせた。
ある日、散歩の途中で鳥の声を聴いた光さんが「○○ですね」と言ったのが初めての言葉だった。
レコードの解説どおりの内容を口にしたのだそうだ。
それがきっかけになり、光さんはコミュニケーションすることを覚えはじめた。
音楽好きの光さんがピアノを弾けたら楽しいだろうなと思った奥さんは、彼にピアノを習わせる。
結局あまり演奏することには興味が移らなかったそうで、その代わり、彼は作曲を始めたのだ。
途中、彼は作曲をしなくなった時期があるそうだ。
スランプがやってきたのだ。
その間も音楽を知る勉強は続けていて、7年ぶりにアルバムを発売。
大江健三郎さんの70歳の誕生日に「70歳になったソナチネ」をプレゼントした。
光さんの音楽を聴くきっかけになったのは大江健三郎さんの「静かな生活」という作品だった。
ちなみに「静かな生活」を読むきっかけになったのは江國香織さんの「冷静と情熱のあいだ」である。
この作品の中で主人公が「静かな生活」を読むシーンがあるのだ。
結構長く描写が続くので、読んでいた作品ではなく登場した「静かな生活」のほうに興味が沸き、友人に借りて読んでみたのだった。
大江作品は文庫本も結構な値段だ。
まだそのときは、興味程度だったので面白くなければ読んだふりをして返せばいいやと軽い気持ちで読み始めた。
今では私の一番愛する作品である。
本は結構たくさん読むけれど、涙を流した作品はまだ数えるほどしかない。
5つもないだろう。
これはその中の貴重な1冊で、今までで一番読み返した本でもある。
どんなにいらいらしていても読んでいるうちに心が落ち着いてきて、あっという間に登場人物にシンクロする。
読み終わる頃にはあったかい気持ちになってじわりと涙がわいてくる。
大江作品は学生時代に現代小説の授業で「死者の奢り」を扱ったことがあった。
そのときはとても堅苦しく暗い上に気取った作品に思えたので、その後作品を読むことはなかった。
だから、10年を経て読んだ「静かな生活」はとても同じ作家の書いた作品とは思えなかった。
「静かな生活」は大江健三郎さん一家の"静かな生活"を元にかかれた連作小説である。
この作品に登場するイーヨーのモデルが光さん。
主にイーヨーの妹、女子大生マーちゃんの視点で物語が進む。
誰ピカでは、実際の大江一家の"静かな生活"が紹介された。
登場する居間も本棚もCDラックも本で読んだとおり。
CDラックからうれしそうにCDを選ぶ光さんはイーヨーそのもの!
一家の生活の中心は居間。
かなり広い居間には父のもの、母のもの、光さんのものが所狭しと並んでいるのだけど、無駄なものは一つもない。
この居間で父は父の仕事、光さんは作曲、母は水彩画を描く。
そこには暖かい沈黙がある。
その様子を見ているだけで優しくうれしい気持ちになった。
ああ、"静かな生活"だ・・・。
光さんは誰に対しても常に丁寧語をしゃべる。
両親に対してはもちろん、妹や弟にも。
そして時々冗談も言う。
ちょっと冗談を言ったときの彼は照れくさそうに首をすくめる。
うれしいことがあったときは首をすくめながら肩を震わせてとても素敵な笑顔になる。
その表情を見るとなんだか私の心も軽くなってくるんだな。
光さんの音楽は、明るい太陽の下で踊る空気のようだ。
きらきら輝いている。
メロディーが中心でリズムの強い音楽を聞きつけていると少し物足りなく感じるかもしれないけれど、疲れちゃったな~ちょっと泣いちゃおうっかな~
とか言うときにはとても素敵な処方箋に成ること間違いなし!
ぜひ一度聴いてみて欲しい。
そんなわけで、光さんの笑顔を見たおかげで、なんとか気分を変えることが出来たようだ。
落ち込みそうになったら彼の音楽に耳を傾けよう。
「静かな生活」は大江さんの奥様の実兄である故伊丹十三監督により映画化もされている。
この作品もとても素敵だ。
物語の主な舞台として登場する居間は、今回誰ピカで紹介された実際の大江家の居間が使われている。
小説はね~という方は、DVDがあるので映画のほうを見て欲しいな。
「静かな生活」
ジャンル : ドラマ
製作年 : 1995年
製作国 : 日本
配給 : 東宝配給
監督 : 伊丹十三
プロデューサー : 細越省吾、 川崎隆
原作: 大江健三郎
脚色: 伊丹十三
出演: 山崎努、柴田美保子、渡部篤郎、佐伯日菜子、今井雅之、緒川たまき、岡村喬生、宮本信子 他
「70歳になったソナチネ」
MUSIC BY 大江光、PLAY BY 荻野千里(ピアノ)、和久井仁(オーボエ)




slanさん
すみません、つい様つけて呼んでしまいました。
これ、ネットでの私のクセなので、気にしないで~。(笑)
大江健三郎さんのものは、読んだことないです。
なぜって言われても、なんとなくなんですが・・・。
「静かな生活」そんなにいいですか?
機会があったら、読んでみたいですね。
でも、静かな・・・って、うちとは大違いだー!と思ってしまった・・・。
音がうるさい、うるさくないの静かではもちろんないですが、いろんな意味で、うちはまったく静かじゃないな~。(ま、私が私だから仕方ないか・・・)
私が今まで一番泣いた本は、たぶん、倉田百三の「出家とその弟子」だと思う・・・。(どっかで言いましたっけ?)
初めて読んだ時、もうぼろぼろ泣けて泣けて仕方なかった。(ほんととめどなく涙が溢れたという感じ)
それから何度か読み返しましたが、やっぱり、泣けました・・・。
投稿情報: yumiko | 2006-01-22 01:57
昨日お休みだったので部屋の片づけをしていたのですが、
本棚の隅に「冷静と情熱のあいだ」を見つけてついつい読みふけって
しまいました(Bluの方ですが)Rosso だったらもっと偶然感だったかな^^
えと「静かな生活」本も読みましたし、映画も見ました^^
(映画じゃないかDVDで見たから)
大江健三郎氏を崇拝しているミュージシャンが絶賛していたので
そのミュージシャンを崇拝している私は素直に読んだんですが(笑)
本はやっぱり何度も何度も読み返して今に至っています。
光さんとお父様の会話を昔何かのTV番組で見たことがありますが
TVだったから?お父様の方も敬語で話しかけておられたような
覚えがあるのですが、光さん同様、健三郎氏のお話しの仕方って
とってもチャーミングだと思うのですが・・・。
泣けた・・というのとは違うくくりになるかもしれませんが、
若いときに読んで今でも読み返す本といえば
福永武彦さんの「草の花」です。きゃ~書いて恥ずかしいね(汗)
投稿情報: ゆみ | 2006-01-22 18:04
slanさん、ちょっと場所をお借りします。
ゆみ様(って、HNが似てる)
はじめっまして、時折ここを訪れる?yumikoと申します。(自称slanさんの弟子)
福永武彦の「草の花」に反応して出てきてしまいました。
どうしてって、私も大、大、大好きだからで~す!
で、なんで恥ずかしいの~?
確かに、甘いといえば甘いですが・・・。(でもそこがいい)
私も何度読み返したことか・・・。
高校生位のときは、読むたびに泣いていましたよ。
最後、二人で行くコンサートがね、ショパンのピアノコンチェルト、というのもすごく気に入ってて・・・。(ショパンも大、大、大好きなもので)
いや~、なんか、とっても懐かしくて(最近は読んでいない)ついついでしゃばってしまいました~。
ごめんなさ~い!
投稿情報: yumiko | 2006-01-23 09:07
>yumikoさん
いや、そんななぜとか聞きませんよ~^^;
人の好みはいろいろあるからこそ面白いし、新しい世界も見えますからね!
"静かな生活"って人それぞれ違うんだろうなと。
yumikoさんがおっしゃるようにおとがうるさいうるさくないもあるだろうけど、なんとなく心が穏やかでくつろいでいられる生活なのかなと思ったり。
私にいつか訪れる静かな生活はどんな生活なのかなあと想像したりして。
倉田百三の「出家とその弟子」は以前教えていただきました。
まだ読んでないけど^^;
きちんとこれから読みたい本リストに入れさせていただきました^^
読んだらこっそり感想をおくるかも・・・。
あ・・・あまり期待しないで~^^;
投稿情報: 安井文@管理人 | 2006-01-23 16:16
slanさん、お久しぶりです。
大江健三郎さんは、難しそうで読んだことはないのですが、懐かしい本のタイトルが書かれていたので書き込みしました。
私は、辻仁成を読んでた時期があって、江國香織の「冷静と情熱のあいだ」を読んで、どうしても、約束の場所
ドゥオモも知りたくて、2時間バスにゆられて映画を観に行ったことがあります。
けど、キャストの竹之内豊は納得だったけど、ケリー・チャンは許せなかった。全然、私のイメージとは違っていたから。
小説の世界にすごくのめり込んでいたのに、映画を観たとたん、一気に熱がさめてしまったの。
slanさんのお祈りが聞き入れられて、この冬は雪かきが少ないなーと思っていたら、昨日は4回も雪かきしました。
でも今日は、良いお天気です。札幌のほうは大荒れになりそうと言ってるんだけどね。
投稿情報: ポコリン | 2006-01-23 16:16
>ゆみさん
Blueのほうはラストだけ読みました。
これって2冊読まないと完結しないんですよね。
知らなくて映画を見たらラストが違っててあれ~?でした^^;
Blueのほうにも「静かな生活」は出てくるのかな?
大江健三郎氏を崇拝しているミュージシャンってだれだろう?
私も知ってる人かな?
実は私も大好きなミュージシャンが読んでいるらしいと小耳にはさんだので興味が湧いたのでした^^;
きっと違うミュージシャンだと思うけど。
大江健三郎さんも普段から丁寧語で喋られる方です。
大江家ではみなさん丁寧語のようです。
なんか素敵だなあと思ったり。
>光さん同様、健三郎氏のお話しの仕方って
>とってもチャーミングだと思うのですが・・・。
私も思います~^^
語尾がはっきりしていて断定形で喋られるんですよね。
だから何がいいたいのかよくわかるし。
お2人はとてもよく似てると思う私です。
福永武彦さんの「草の花」
初めてタイトルを聴きました。
ゆみさんもyumikoさんもなんだか少女のようで・・・^^;
どんな本なのか気になるぅ!
投稿情報: 安井文@管理人 | 2006-01-23 16:17
>ポコリンさん
お久し振りです^^
この週末は、関東から北では大雪で大変だったようですね。
私のお祈りが弱かったかっ^^;
辻仁成さんですか、ちょっと以外でした。
私のポコリンさんのイメージはどちらかというと江國香織さんを読んでいるイメージでした(思い込み~^^;)
ケリー・チャン嬢はね・・・私も魅力がよく分からないわ~^^;
どんな女優ならOKかしら?
気が向いたら是非教えてくださいね!
大江健三郎さんは確かに難しいイメージありますね。
私にとって「静かな生活」は水が土に染み込むような感じでなじみました。
大江さんの文章はたしかに作品によっては読みにくいです。
とりあえず読むとしたら「自分の木の下で」がお勧めです。
これは子供向けに書かれた本なので、文章表現は通常の小説よりも噛み砕いているようです。
ただ、内容に関してはとても深いなあと思ってます。
奥様が挿絵をかかれていてぱらぱら見るだけでもわくわくしますよ。
今晩は天気が荒れないことをお祈りしておきます!
投稿情報: 安井文@管理人 | 2006-01-23 16:42
>slanさん、こんにちは。
辻さんの本を読むようになったのは、図書館でたまたま手にした本が、彼の学生時代についてのエッセイで、小学生から高校生まで北海道に住んでいたことを知ったからです。slanさんが「蟲師」の作者が山口県出身の方だと感じたように、彼と同世代なので通じる感覚があったからです。
だから、彼が南果歩と結婚した時には違うなーと感じたし、中山美穂と結婚をするときに、「以前、逢ったことがあるように思った」というコメントに、「冷静と情熱のあいだ」の主人公は私的には中山美穂だったよなーと納得したわけです。
お正月、北海道一の書店に行って、スーパーで買い物をするように買いたい本をかごに入れて買った一冊に「私の読書日記」と言う本があって、まだ書き込んでいないんだけど、今年は大江作品にも挑戦して書き込みたいと思います。
投稿情報: ポコリン | 2006-01-24 12:53
>ポコリンさん
辻さんは北海道出身なんですね。
初めて知りました。へえ~。
同郷の方の作品にはやはり興味を覚えるものなのですね。
ポコリンさんとの共通点を見つけて嬉しいです^^
>「冷静と情熱のあいだ」の主人公は私的には中山美穂だったよなーと納得したわけ
そう言われると、彼女のほうがイメージ合うかも・・・。
辻さんはなんとなく感覚で生きてるイメージがあって、こういう選択もわりと直感に頼っちゃうタイプかな~ななどと思っています。
ほんの大人買い!かっこいいな~^^
「私の読書日記」ですか。
私は専用のノートは持っていないのですが、読み始めた日と終わった日を手帳に書いています。読み終わった日には簡単なメモ程度の感想文を書くことも。
でも、きちんと書いたほうがいいなあと最近は思います。
投稿情報: 安井文@管理人 | 2006-01-30 14:29